大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

秋風の清き夕に天の川・・・巻第10-2042~2044

訓読 >>>

2042
しばしばも相(あひ)見ぬ君を天の川 舟出(ふなで)早(はや)せよ夜(よ)の更けぬ間に

2043
秋風の清き夕(ゆふへ)に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士(つきひとをとこ)

2044
天の川 霧(きり)立ちわたり彦星(ひこほし)の楫(かぢ)の音(おと)聞こゆ夜(よ)の更けゆけば

 

要旨 >>>

〈2042〉たびたび逢えないあなたですのに、天の川に早く舟出して下さい。夜が更ける前に。

〈2043〉秋風がすがすがしい今夜、天の川に舟を出して漕ぎ渡っている、月人壮士が。

〈2044〉天の川に霧がたちこめてきて、彦星が舟を漕ぐ楫の音が聞こえる。次第に夜が更けてゆくと。

 

鑑賞 >>>

 七夕の歌。2043の「月人壮士」は、月を擬人化したもの、月の神、月の若者、牽牛(彦星)などとする説があるようです。「月人壮士」という表現は、『万葉集』の七夕歌のうち5首に使われています。