大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

中臣宅守と狭野弟上娘子の贈答歌(16)・・・巻第15-3779~3781

訓読 >>>

3779
我(わ)が宿(やど)の花橘(はなたちばな)はいたづらに散りか過ぐらむ見る人なしに

3780
恋ひ死なば恋ひも死ねとや霍公鳥(ほととぎす)物思(ものも)ふ時に来(き)鳴き響(とよ)むる

3781
旅にして物思(ものも)ふ時に霍公鳥(ほととぎす)もとなな鳴きそ我(あ)が恋まさる

 

要旨 >>>

〈3779〉家の庭の花橘は、いたずらに散っていくままになっているのだろうか、誰も見る人もなく。

〈3780〉恋い死にしたいなら、そのまま死んでしまったらとでもいうのか、ホトトギスよ。物思いに沈んでいる時にやってきて鳴き立てるとは。

〈3781〉旅先にあって物思う時に、ホトトギスよ。わけもなくそんなに鳴かないでおくれ。わが恋が増すではないか。

 

鑑賞 >>>

 越前武生の配所で、中臣宅守が花鳥に寄せて思いを述べて作った歌7首のうちの3首。3779の「我が宿」は、京にある宅守の家の庭。「散りか過ぐらむ」の「らむ」は、現在推量。3780の「響むる」は、大きな声で騒ぐ。3781の「もとな」は、わけもなく。「な鳴きそ」の「な~そ」は、禁止。「まさる」は、増す、多くなる。