大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

百済野の萩の古枝に・・・巻第8-1431

訓読 >>>

百済野(くだらの)の萩(はぎ)の古枝(ふるえ)に春待つと居(を)りし鶯(うぐひす)鳴きにけむかも

 

要旨 >>>

百済野の萩の古枝に春の訪れを待っていたウグイスは、もう鳴き始めているだろうか。

 

鑑賞 >>>

 山部赤人の歌。「百済野」は、奈良県北葛城郡広陵町百済にある野とされますが、「くだら」の名の地は関西には何か所かあり、大阪市天王寺区と見る説もあります。百済国からの帰化人がいたための名だろうとされます。春の光景を眼前にして、まだ冬だった頃に見かけた百済野の萩の古枝にいた鶯を思い出しています。斎藤茂吉はこの歌を評し、「何でもないようであるが、徒に興奮せずに、気品を持たせているのを尊敬すべきである」と言っています。