大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

うち日さす宮道を人は・・・巻第11-2382

訓読 >>>

うち日さす宮道(みやぢ)を人は満ち行けど我(あ)が思ふ君はただひとりのみ

 

要旨 >>>

都大路を人が溢れるほどに往来しているけれど、私が思いを寄せるお方はたったお一人っきりです。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。「うち日さす」は「宮」の枕詞。「宮道」は、藤原京都大路とされます。官人の妻が、朝、出仕して宮道を行く夫を捉えての歌でしょうか。あるいは作家の田辺聖子は、次のように評しています。「愛の不思議にはじめて遭遇しておどろく、そのさまがういういしいので、まだ十代の恋だろうか。素直なおどろきが、忘れがたい思いを残す。『万葉集』には強い輝きを放つ大粒の宝石も多いが、こんなに小粒のダイヤのような、愛らしいのも多い」