大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(32)・・・巻第14-3565

訓読 >>>

かの子ろと寝(ね)ずやなりなむはだすすき宇良野(うらの)の山に月(つく)片寄るも

 

要旨 >>>

今夜はあの子と共寝することなく終わりそうだ。はだすすきの繁る宇良野の山に月が傾いてきた。

 

鑑賞 >>>

 「はだすすき」は穂を出した薄で、「宇良野」の枕詞。「宇良野」は、長野県上田市浦野か。「月(つく)」は月の東語。女の許に向かっている男が、月が傾いたのを見て、行き着いたら夜明けになるのではないかと焦っている歌です。万葉の恋人たちはどんなにお熱い中でも、会えるのはひと月に十日くらいがせいぜいだったといいます。その理由はすべて月にあり、三日月の頃から通い、闇夜では会うことができなかったのです。