大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

天雲のそきへの極み・・・巻第19-4247

訓読 >>>

天雲(あまくも)のそきへの極(きは)み我(あ)が思へる君に別れむ日近くなりぬ

 

要旨 >>>

天雲の果てまでも限りなく思っている母上に、お別れしなければならない日が近くなりました。

 

鑑賞 >>>

 阿倍朝臣老人(あべのあそみおゆひと:伝未詳)が遣唐使の随員として唐に渡る直前に、母にさし上げた悲別の歌。「老人」は名であって、年寄りの意味ではありません。「そきへ」は、遠方。敬愛する母を残して旅立つ子の苦悩であり、シングルマザーの一人っ子の歌のように感じられます。

 

 

遣唐使船の乗組員

 『延喜式』大蔵省の入諸蕃使によれば、遣唐使船の乗組員の構成は次の通りです。

入唐大使、副使、判官、録事、知乗船事、訳語、請益生、主神、医師、陰陽師、画師、史生、射手、船師、音声長、留学生、学問僧、傔従、新羅奄美訳語、卜部、雑使、音声生、玉生、鍜生、鋳生、細工生、船匠、柁師、傔人、挟抄、還学僧、水手長、水手。