大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

吾が齢し衰へぬれば・・・巻第12-2952

訓読 >>>

吾が齢(よはひ)し衰(おとろ)へぬれば白細布(しろたへ)の袖のなれにし君をしぞ思ふ

 

要旨 >>>

おれも年を取って体も衰えてしまったが、今しげしげと通わなくても、長年馴れ親しんだお前のことが思い出されてならない。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。「白細布の」は「袖」の枕詞。「白細布の袖の」は、「なれ」を導く序詞。「なれにし」は「馴れ」と「萎(な)れ」の掛詞になっており、馴れ親しんだ意と、使用して馴染んで皺くちゃになる有様を言っています。年衰えた男が長年連れ添った妻を有り難く思っている歌と解しましたが、「君」とあるので女が男を思う歌とも取れます。