訓読 >>>
筑波嶺(つくはね)のさ百合(ゆる)の花の夜床(ゆとこ)にも愛(かな)しけ妹(いも)ぞ昼も愛(かな)しけ
要旨 >>>
筑波の嶺に咲くさ百合の花ではないが、夜床(ゆとこ)で可愛くてならない彼女は、昼間でも可愛くてならない。
鑑賞 >>>
常陸国の防人の歌。「筑波嶺」は、茨城県西部の筑波山。上2句は「夜床」を導く序詞。「さ百合(ゆる)」の「さ」は美称、「ゆる」は「ゆり」の方言で山百合の花。「夜床(ゆとこ)」は「よとこ」の方言。「愛しけ」は「愛しき」の方言。妹の可愛さを称えるのに終始しており、斎藤茂吉はこの歌を「言い方が如何にも素朴直截で愛誦するに堪うべきもの」と評しています。