大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(11)・・・巻第14-3428

訓読 >>>

安達太良(あだたら)の嶺(ね)に臥(ふ)す鹿猪(しし)のありつつも我(あ)れは至らむ寝処(ねど)な去りそね

 

要旨 >>>

安達太良山の鹿猪(しし)がいつも同じねぐらに帰って寝るように、私も毎晩通ってきて共寝をしようと思うから、そのまま寝床を変えないでいてほしい。

 

鑑賞 >>>

 「安達太良の嶺」は福島県二本松市の西方にある安達太良山。現在では日本百名山の一つに数えられている、標高1700mの美しい山です。「臥す鹿猪の」は、そこを臥所としている鹿猪で、猪鹿は一たび臥所と定めたところは、けっして他に移さない習性を持っているところから、譬喩として「ありつつ」にかかる序詞となっています。「ありつつも」は、いつまでも。「な去りそね」の「な~そね」は禁止。

 男が女に対し、自分の変わらぬ愛を誓い、女にもそうあってほしいと言っています。序詞の内容から、作者は狩猟を生業にしていた人ではないかとされ、その僕実さがうかがえる歌となっています。