大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

桜花咲きかも散ると見るまでに・・・巻第12-3129

訓読 >>>

桜花(さくらばな)咲きかも散ると見るまでに誰(た)れかも此所(ここ)に見えて散り行く

 

要旨 >>>

まるで桜の花が咲いてすぐに散っていくように、誰も彼も、現れたかと思うとすぐまた散り散りになっていく。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から「羈旅発思(旅にあって思いを発した歌)」。「咲きかも」「誰れかも」の「かも」は疑問の係助詞。旅先の往来に現れては消えていく人の中に妻の幻影を見ている歌、あるいは旅先での出会いと別れを歌ったもので、若い人麻呂の歌だろうとされます。この歌は、のちに蝉丸の「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」(『後撰集』)に引き継がれています。