大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

春の日に張れる柳を取り持ちて・・・巻第19-4142

訓読 >>>

春の日に張れる柳(やなぎ)を取り持ちて見れば都の大道(おほち)し思ほゆ

 

要旨 >>>

春の日に、芽吹いてきた柳の小枝を折り取って眺めると、奈良の都の大路が思い起こされてならない。

 

鑑賞 >>>

 天平勝宝2年(750年)の3月2日、大伴家持が、新柳の枝を折り取って都を思う歌。この時33歳の家持は、越中での4度目の春を迎えていました。

 「張れる」は、芽が出る、ふくらむ。「大道し」の「し」は強意。この歌から、当時の都大路の並木には柳が植えられていたことが分かります。柳は漢詩的な素材であり、柳葉は化粧をした女性の細い眉に譬えられます。家持は都大路のことを思い出すと同時に、都の美女たちのことも思い浮かべていたのかもしれません。