大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

遣新羅使人の歌(17)・・・巻第15-3662~3664

訓読 >>>

3662
天(あま)の原(はら)振り放(さ)け見れば夜(よ)ぞ更(ふ)けにける よしゑやしひとり寝(ぬ)る夜(よ)は明けば明けぬとも

3663
わたつみの沖つ縄海苔(なはのり)来る時と妹(いも)が待つらむ月は経(へ)につつ

3664
志賀(しか)の浦に漁(いざ)りする海人(あま)明け来れば浦廻(うらみ)漕(こ)ぐらし楫(かぢ)の音(おと)聞こゆ

 

要旨 >>>

〈3662〉天空を振り仰いで見ると、すっかり夜が更けてしまった。どうせ一人っきりで寝るこんな夜ならば、明けるなら早く明けてほしい。

〈3663〉沖の海底に生える縄海苔をたぐり寄せるように、もう帰って来るだろうと妻が待っている月も過ぎていく。

〈3664〉志賀の浦で漁をする漁師は、夜が明けてきたので岸辺を漕いでいるらしい。櫓を漕ぐ音が聞こえる。

 

鑑賞 >>>

 題詞に「海辺にして月を望みて作る歌九首」とあるうちの3首。3662は、旋頭歌の形式。「よしゑやし」は、どうなろうとも、ええままよ。3663の上2句は「来る」を導く序詞。「繰る」と「来る」を掛けています。「縄海苔」は未詳ながら、縄のように細長い海苔だろうとされます。3664の「志賀」は、博多湾の入口にある志賀島。「浦廻」は、海岸の曲がって入り組んだところ。「漕ぐらし」の「らし」は、根拠に基づく推定。きっと~だろう。