大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

夏草の露別け衣・・・巻第10-1994

訓読 >>>

夏草(なつくさ)の露(つゆ)別(わ)け衣(ころも)着(つ)けなくに我(わ)が衣手(ころもで)の干(ふ)る時もなき

 

要旨 >>>

夏草の露にまみれて踏み分けてきたような、そんな着物を着たわけでもないのに、私の着ている着物の袖は涙で乾く時がありません。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の「露に寄せる」歌。「露別け衣」は、夏草の露を分ける衣の意で、朝の労働服のことか。新しく美しい語です。「着けなくに」の「なくに」は逆接。恋の嘆きをしている男の歌とみられます。