大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

隠りのみ恋ふれば苦し・・・巻第10-1992

訓読 >>>

隠(こも)りのみ恋ふれば苦しなでしこの花に咲き出(で)よ朝(あさ)な朝(さ)な見む

 

要旨 >>>

人目を忍んで心ひそかに恋続けるのはつらいものです。せめて、なでしこの花になって我が家の庭に咲き出てください。そうすれば朝ごとに見ることができますのに。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の「花に寄せる」歌。上の解釈は女の歌としましたが、男の立場から、関係を結んでいる女がいつまでも母に秘密にしているのに気を揉み、なでしこの花のように咲き出て母に打ち明けよ、そうして毎朝見るように逢おう、と命じたものとする解釈もあります。「隠る」は、内に含まれている、物陰にひそむ、外から見えない状態。撫子の花は朝に咲きます。