巻第7
訓読 >>> 1364見まく欲(ほ)り恋ひつつ待ちし秋萩(あきはぎ)は花のみ咲きて成(な)らずかもあらむ 1365我妹子(わぎもこ)が屋前(やど)の秋萩(あきはぎ)花よりは実になりてこそ恋ひまさりけれ 要旨 >>> 〈1364〉見たい見たいと待ち続けていた…
訓読 >>> 1283梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の石(いし)の橋はも 男盛(をざか)りに我(わ)が渡りてし石の橋はも 1284梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の川の静菅(しづすげ) 我(わ)が刈りて笠にも編(あ)まぬ川の静菅 要旨 …
訓読 >>> 住吉(すみのえ)の出見(いでみ)の浜の柴な刈りそね 娘子(おとめ)らが赤裳(あかも)の裾(すそ)の濡れて行(ゆ)かむ見む 要旨 >>> 住吉の出見の浜の柴は刈らないでくれ。乙女らが赤い裳裾を濡らしたまま行くのをそっと見たいと思うか…
訓読 >>> 道の辺(へ)の草深百合(くさぶかゆり)の花笑(はなゑ)みに笑みしがからに妻と言ふべしや 要旨 >>> 道のほとりの繁みに咲く百合の花のように、ちょっと微笑みかけたからといって、妻とは決めてかからないでください。 鑑賞 >>> ちょっ…
訓読 >>> 命(いのち)をし幸(さき)くよけむと石走(いはばし)る垂水(たるみ)の水をむすびて飲みつ 要旨 >>> 我が命が長く幸福であれと願い、激しくを流れる滝の水を両手にすくって飲んだよ。 鑑賞 >>> 「石走る」は「垂水」の枕詞。「垂水」…
訓読 >>> 1087穴師川(あなしがは)川波立ちぬ巻向(まきむく)の弓月(ゆつき)が岳に雲居(くもゐ)立てるらし 1088あしひきの山川の瀬の響(なる)なへに弓月(ゆつき)が嶽(たけ)に雲立ち渡る 要旨 >>> 〈1087〉穴師川に川波が立っている。巻向…
訓読 >>> 通るべく雨はな降りそ我妹子(わぎもこ)が形見の衣(ころも)我(あ)れ下(した)に着(け)り 要旨 >>> 下着まで通るほど雨よ降らないでくれ。愛しい彼女の形見の衣を下に着ているのだから。 鑑賞 >>> 「雨を詠む」歌です。彼女の衣を…
訓読 >>> 西の市(いち)にただ独り出でて目並(めなら)べず買ひてし絹の商(あき)じこりかも 要旨 >>> 西の市にたった一人で出かけて、見比べもせずに自分だけで見て買ってしまった絹は、買い損ないの大誤算だったよ。 鑑賞 >>> 「商じこり」は…
訓読 >>> 1182海人(あま)小舟(をぶね)帆(ほ)かも張れると見るまでに鞆(とも)の浦廻(うらみ)に浪立てり見ゆ 1183ま幸(さき)くてまた還(かへ)り見む丈夫(ますらを)の手に巻き持たる鞆(とも)の浦廻(うらみ)を 要旨 >>> 〈1182〉漁師…