大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

「妹(いも)」と呼んでみたい・・・巻第12-2915

訓読 >>>

妹(いも)と言はば無礼(なめ)し畏(かしこ)ししかすがに懸けまく欲しき言(こと)にあるかも

 

要旨 >>>

あの娘(こ)のことを妹(いも)と呼んだら失礼だし恐れ多いけれど、そうは言ってもはっきり口に出して言ってみたい言葉だ。

 

鑑賞 >>>

 「妹(いも)」は『万葉集』の歌では概ね男性から親愛の情を込めて女性を呼ぶ、特に恋歌において一般化していた呼称に見えますが、この歌からは、やはり男性が女性を「妹」と呼ぶことには、特別な意味合いが込められていたことが分かります。「なめし」は、無礼だ。「畏し」は、恐れ多い。「しかすがに」は、しかしながら、そうはいうものの。「懸けまく」は、口に出して言うこと。身分の高い女性への片想いの歌でしょうか。

 

作者未詳歌

 『万葉集』に収められている歌の半数弱は作者未詳歌で、未詳と明記してあるもの、未詳とも書かれず歌のみ載っているものが2100首余りに及び、とくに多いのが巻7・巻10~14です。なぜこれほど多数の作者未詳歌が必要だったかについて、奈良時代の人々が歌を作るときの参考にする資料としたとする説があります。そのため類歌が多いのだといいます。

 7世紀半ばに宮廷社会に誕生した和歌は、7世紀末に藤原京、8世紀初頭の平城京と、大規模な都が造営され、さらに国家機構が整備されるのに伴って、中・下級官人たちの間に広まっていきました。「作者未詳歌」といわれている作者名を欠く歌は、その大半がそうした階層の人たちの歌とみることができ、東歌と防人歌を除いて方言の歌がほとんどないことから、機内圏のものであることがわかります。

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