大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

あんな醜いデブ男と!?・・・巻第16-3821

訓読 >>>

美麗(うまし)ものいづく飽(あ)かじを坂門(さかと)らが角(つの)のふくれにしぐひ合ひにけむ

 

要旨 >>>

美しい女だったらどんな相手だって結婚できるのに、坂門の娘は、よりによって角の太っちょ男なんかと情交を通じるなんて。

 

鑑賞 >>>

 題詞に「児部女王(こべのおほきみ)が嗤(わら)ふ歌」とあります。左注に説明があり、「あるとき娘子がいた。姓は坂門氏で、この娘子は、高い身分の家の美男子の求婚を断り、卑しい家の醜男の求婚を受け入れた。そこで、児部女王はこの歌を作ってその愚かさを嘲笑した」。つまり、美女なのでどんな男とでも結婚できたはずなのに、よりによってあんな身分の低い醜男の求婚に応じるとは、なんと愚かな女だ、と嘲っているのです。

 「坂門」は氏の名で、「角」も相手の男の氏の名ではないかとされます。「しぐひ合ひ」は語義未詳ながら、『日本国語大辞典』には「男女がくっつきあう、交わるなどの意か」とあります。どうやら、そうした行為を卑猥に呼んだ語のようです。いずれにしても、こんなことを言う児部女王はちょっとヒドイ女だと思いますし、自分の好きな男を選んだ坂門氏の娘にとっては「大きなお世話!」なお話でありますよ。

 

f:id:yukoyuko1919:20220125043747j:plain