大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(3)・・・巻第20-4373

訓読 >>>

今日(けふ)よりは返り見なくて大君(おほきみ)の醜(しこ)の御楯(みたて)と出で立つ我(わ)れは

 

要旨 >>>

今日からは、もう決して後を振り返ることなく、大君の醜の御盾として出立するのだ、私は。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持が収集したとされる「防人の歌」には、作者名が記されているものがかなりあります。おかげで、私たちは当時の庶民の名前を窺い知ることができます。この歌は、火長(かちょう)の今奉部与曾布(いままつりべのよそふ)という人が作った歌です。火長というのは、兵士10人の集団の長のことです。

 歌の内容は出征する男たちの心を奮い立たせるもので、そんな風に自身の心に暗示を与え、強くふるまったのでしょう。戦時中の日本においても、多く愛誦されたといいます。しかし、こういう勇ましく強い歌は少数派であり、家持はむしろ、人間の弱さといいますか、真情の流露である歌を尊重し、積極的に採録してくれました。それらの歌を通して、私たちは、当時の人たちの生の声を直接聞いているかのように感じることができます。

 

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