大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

笑みみ怒りみ紐解く・・・巻第11-2627

訓読 >>>

はねかづら今する妹(いも)がうら若み笑(ゑ)みみ怒(いか)りみ付けし紐(ひも)解く

 

要旨 >>>

はねかづらを新しく着けた娘は、初々しく、はにかんだりじれたりしながら、身につけた紐を解いていくよ。

 

鑑賞 >>>

 新婚初夜の儀式のはねかづらをつけた娘が、初々しく顔を朱に染めながら、馴れない下紐を苦労して解いている姿を詠っています。「はねかづら」は年ごろの娘がつける髪飾りのことですが、どんな材料や形だったのかはよく分かっていません。髪にさし、神女へと変身するためのものだったともいわれています。

 それにしても、歌われているのは、なかなかいい光景です。新妻の色っぽさと共に、ドキドキしながらも、紐を解いていくようすをじっと見つめる夫の姿が目に浮かびます。しかしながら、こうした幸せそうな新婚の歌に接するとき、図らずも齢を重ね、長らく夫婦生活を経てきた身としては、ふと、アーサー・ゴッドフリーの言葉が脳裏をよぎるんです。

「結婚するとき、私は女房を食べてしまいたいほど可愛いと思った。今考えると、あのとき食べておけばよかった」

 しかし、この歌には全く違う解釈もあり、笑ったり怒ったりして女の下着の紐を解こうとしているのは男の方だとする見方もあります。

 

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