大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

なかなかに何か知りけむ・・・巻第12-3033

訓読 >>>

なかなかに何か知りけむ我が山に燃ゆる煙(けぶり)の外(よそ)に見ましを

 

要旨 >>>

どうして私はあの人と知り合ってしまったのでしょうか。近くの山に立ち上る煙を眺めるように、遠くから見ているだけでよかったのに、私自身に火がついてしまったのです。

 

鑑賞 >>>

 こんなに恋に苦しむなら、遠くから見て憧れているだけのほうがよかったと、知り合ってしまったことを後悔しています。「なかなかに」は、なまじっか、中途半端に、の意で、「何か~けむ」は「どうして~たのだろう」と、過去の原因を推量する言い回しです。「煙」は山焼きの煙とされます。なお、歌の解釈は女性口調としましたが、実は作者の性別は不明です。

 作者ならずとも、付き合ったら付き合ったで新たな悩みや苦しみが生じるだろうし、かといって、別れてしまえば、なおさら苦しい・・・。つくづく男女の恋というのは、切なく厄介なもの。とはいえ、まったく何もしないで後悔するのがいちばんつまらない。

 

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恋する万葉集

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