大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

隼人の薩摩の瀬戸を・・・巻第3-248

訓読 >>>

隼人(はやひと)の薩摩(さつま)の瀬戸を雲居(くもゐ)なす遠くも我(わ)れは今日(けふ)見つるかも

 

要旨 >>>

隼人の住む薩摩の瀬戸よ、その瀬戸を、空の彼方の雲のように遙か遠くだが、私は今この目に見納めた。

 

鑑賞 >>>

 長田王(ながたのおおきみ)が筑紫に遣わされて薩摩に赴いたときの歌。用向きは、大宰府管内の巡察のためだったとみられ、この歌は、『万葉集』の歌のなかで、最も南の地で詠まれた歌とされます。船中にあって、海上遠く薩摩の瀬戸を眺望して詠んだ趣きで、当時の薩摩は朝廷の影響力がなかなか及ばず、問題の多い所だったといいます。「隼人」は、大隅・薩摩地方の精悍な部族。「薩摩の瀬戸」は鹿児島県阿久根市黒之浜と天草諸島の長島との間の海峡。

 作者の長田王は、聖武朝初期に、六人部王、門部王、佐為王、桜井王ら10余人と共に「風流侍従」とよばれた皇族の一人で、最終官位は散位正四位下。『万葉集』に6首の歌があります。

 

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