大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

六月の地さへ裂けて・・・巻第10-1995

訓読 >>>

六月(みなづき)の地(つち)さへ裂(さ)けて照る日にも我(わ)が袖(そで)干(ひ)めや君に逢はずして

 

要旨 >>>

六月の、地面さえ裂けて照りつける日射しにも、私の着物の袖は涙で乾くことがありません。あなたにお逢いできないので。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の「日に寄せる」歌。ここの六月は旧暦で、今の七月、暑い夏の真っ盛りのころです。「干めや」の「や」は反語。作家の田辺聖子はこの歌を評し、「形容が斬新で、烈日と地割れをもってきたところが、この歌の面白みであろう。真夏の容赦ない暑さや、乾き切った地面などが、この時代より以後の歌によまれることはない。いかにも万葉ぶりの生活感あふれる歌である」と言っています。