訓読 >>>
六月(みなづき)の地(つち)さへ裂(さ)けて照る日にも我(わ)が袖(そで)干(ひ)めや君に逢はずして
要旨 >>>
六月の、地面さえ裂けて照りつける日射しにも、私の着物の袖は涙で乾くことがありません。あなたにお逢いできないので。
鑑賞 >>>
ここの六月は旧暦で、今の七月、暑い夏の真っ盛りのころです。容赦のない日射しや、乾ききって地割れした地面を眼前に捉えての歌で、このような光景がこの時代より後の歌に詠まれることはありません。いかにも庶民的、また直線的な詠みっぷりは、万葉集の歌ならではで、忌憚のない生活感にあふれています。