大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(11)・・・巻第20-4406

訓読 >>>

我(わ)が家(いは)ろに行かも人もが草枕(くさまくら)旅は苦しと告(つ)げ遣(や)らまくも

 

要旨 >>>

我が家のある故郷に行く人がいたらよいのに。旅は苦しくてならないと家の人に告げてもらうのに。

 

鑑賞 >>>

 徴発された防人は、難波津までの道のりを、国庁の役人である防人部領使(さきもりのことりづかい)によって引率されますが、部領使は馬や従者を連れていますから、本人は馬に乗り、荷物も従者に持たせています。しかし、防人たちは自ら荷物を抱えての徒歩のみで、夜は寺院などに泊まることができなければ野宿させられました。作者が言っている旅の苦難は容易に想像できるところです。

 「家(いは)」は「いへ」の方言。「ろ」は接尾語。「行かも」は「行かむ」の方言。「もが」は願望の助詞。「草枕」は「旅」の枕詞。