大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

須磨の海女の塩焼き衣の・・・巻第4-630

訓読 >>>

須磨(すま)の海女(あま)の塩焼き衣(きぬ)の藤衣(ふぢごろも)間遠(まどほ)にしあればいまだ着なれず

 

要旨 >>>

須磨の海女が塩を焼くとき着る藤の衣(ころも)は、ごわごわした目の粗い着物なので、たまにしかまとう機会がなく、いまだにしっくりこない。

 

鑑賞 >>>

 題詞に「大網公人主(おほあみのきみひとぬし)が宴吟(えんぎん)の歌」とあり、古歌か自作かは分かりません。大網公人主は伝未詳。「須磨」は、神戸市須磨区一帯。「藤衣」は、藤の皮の繊維で織った海女の作業着、または庶民の衣服。上3句は新妻の譬えで、下2句は、藤衣の目が粗いことからまだ身体に馴染んでいない、すなわち、まだ打ち解けられない意を譬えています。

 

万葉集の三大部立て

雑歌(ぞうか)
 公的な歌。宮廷の儀式や行幸、宴会などの公の場で詠まれた歌。相聞歌、挽歌以外の歌の総称でもある。

相聞歌(そうもんか)
 男女の恋愛を中心とした私的な歌で、万葉集の歌の中でもっとも多い。男女間以外に、友人、肉親、兄弟姉妹、親族間の歌もある。

挽歌(ばんか)
 死を悼む歌や死者を追慕する歌など、人の死にかかわる歌。挽歌はもともと中国の葬送時に、棺を挽く者が者が謡った歌のこと。

万葉集』に収められている約4500首の歌の内訳は、雑歌が2532首、相聞歌が1750首、挽歌が218首となっています。