訓読 >>>
須磨(すま)の海女(あま)の塩焼き衣(きぬ)の藤衣(ふぢごろも)間遠(まどほ)にしあればいまだ着なれず
要旨 >>>
須磨の海女が塩を焼くとき着る藤の衣(ころも)は、ごわごわした目の粗い着物なので、たまにしかまとう機会がなく、いまだにしっくりこない。
鑑賞 >>>
題詞に「大網公人主(おほあみのきみひとぬし)が宴吟(えんぎん)の歌」とあり、古歌か自作かは分かりません。大網公人主は伝未詳。「須磨」は、神戸市須磨区一帯。「藤衣」は、藤の皮の繊維で織った海女の作業着、または庶民の衣服。上3句は新妻の譬えで、下2句は、藤衣の目が粗いことからまだ身体に馴染んでいない、すなわち、まだ打ち解けられない意を譬えています。