大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

庭に降る雪は千重敷く・・・巻第17-3960~3961

訓読 >>>

3960
庭に降る雪は千重(ちへ)敷(し)くしかのみに思ひて君を我(あ)が待たなくに

3961
白波の寄する礒廻(いそみ)を漕(こ)ぐ舟の楫(かぢ)取る間なく思ほえし君

 

要旨 >>>

〈3960〉庭に降る雪は幾重にも積もりました。けれども私は、そんな程度ぐらいにあなたのお帰りをお待ちしていたのではありません。

〈3961〉白波が寄せてくる磯のあたりを漕ぐ舟が、梶を操る手を休める間もないほど、ひっきりなしに思い続けていたあなたです。

 

鑑賞 >>>

 題詞に「相(あい)歓(よろこ)ぶる」とある大伴家持の歌。家持が赴任した越中には、幸いなことに、彼の下役に同族の大伴池主がいました。池主との詩文の贈答はすぐに始まっており、ここの歌は、天平18年(746年)8月に、所管の地域の戸籍に関する報告書(「大帳」)を朝廷に提出するため、大帳使となって上京した池主が、11月になって無事に帰還したのを祝い、詩酒の宴を催した時の歌です。白雪と海上の漁船を見て心を動かされて詠んだとあります。3961の「白波の~楫取る」は「間なく」を導く序詞。