大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(22)・・・巻第20-4370

訓読 >>>

霰(あられ)降り鹿島(かしま)の神を祈りつつ皇御軍(すめらみくさ)に我れは来(き)にしを

 

要旨 >>>

武神であられる鹿島の神に祈りを捧げながら、天皇の兵士として私はやってきたものを。

 

鑑賞 >>>

 常陸国の防人の歌。「霰降り」は、あられが降って喧(かしま)しいことから、同音の「鹿島」に続く枕詞。「鹿島の神」は、古来、武神として崇められた鹿島神宮常陸国府を出立し、その道すがら長久を祈願したのでしょうか。この歌は、かつての大戦中に政府指導で出された「愛国百人一首」に戦意高揚の歌として選ばれ、「我れは来にしを」を「我れは来たものを、何で逡巡などするものか」などと、武人としての強い決意を述べた歌と解されました。しかし、それは牽強付会と言わざるを得ず、前後の歌との関係からも、末尾の句には、無事に帰還できるだろうか、また妻に逢えるだろうかという不安と危惧の気持ちが込められているものと解せられます。