訓読 >>>
世の常(つね)に聞けば苦しき呼子鳥(よぶこどり)声なつかしき時にはなりぬ
要旨 >>>
ふだんは切なく苦しく聞こえる呼子鳥の、その鳴き声もなつかしく聞かれる春になってきた。
鑑賞 >>>
大伴坂上郎女の歌。「呼子鳥」は、カッコウとされます。左注に3月1日(新暦の4月上旬)とあります。斎藤茂吉はこの歌を評し、奇もなく鋭いところもないが、季節の変化に対する感じも出ており、春の女心に触れることもできるようなところがある、「時にはなりぬ」だけで詠嘆がこもっている、と言っています。