大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

もののふの石瀬の社の・・・巻第8-1470

訓読 >>>

もののふの石瀬(いはせ)の社(もり)の霍公鳥(ほととぎす)今も鳴かぬか山の常蔭(とかげ)に

 

要旨 >>>

石瀬の社にいるホトトギスが、今の今鳴いた。この山の陰で。

 

鑑賞 >>>

 刀理宣令(とりのせんりょう)の歌。刀理宣令は渡来系の人で、東宮聖武天皇)に仕えた文学者とされます。官位は正六位上・伊予掾。『万葉集』には2首、『懐風藻』に2首の詩が載っています。「もののふの」は、八十氏と続くのと同じ意で、五十の「い」、すなわち「石瀬」に掛かる枕詞。「石瀬の社」は未詳ながら、奈良県斑鳩町または三郷町という説があります。「今も鳴かぬか」は「今しも鳴きぬ」と訓むものもあります。「常陰」は、いつも日が射さない所の意で、他には用例がない語です。