訓読 >>>
若草の新手枕(にひたまくら)をまきそめて夜(よ)をや隔てむ憎くあらなくに
要旨 >>>
新妻の手枕をまき始めて、これから幾夜も逢わずにいられようか、可愛くて仕方ないのに。
鑑賞 >>>
「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。「若草の」は「新手枕」の枕詞。なお、結句の「憎くあらなくに」の原文は「二八十一不在國」と書かれており、「二八十一」の「八十一」を、九九=八十一であることから「くく」と読ませています。それで「に・くく」。まるでとんちクイズのようですが、このように本来の意味とは異なる意味の漢字をあてて読ませることを「戯書(ぎしょ)」といいます。また、この時代から掛け算の九九があったことにも驚かされますが、すでに奈良時代以前に中国から伝わっていたといいます。そして、平安時代には貴族の教養の一つとされていたようです。九九を練習した跡が残る木簡が各地で出土しており、中には「八九、七十四」と間違えているものもあり、懸命に練習した様子が窺えるそうです。