大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我が恋は千引の石を・・・巻第4-743

訓読 >>>

我(あ)が恋は千引(ちびき)の石(いし)を七(なな)ばかり首に懸(か)けむも神のまにまに

 

要旨 >>>

私の恋は、千人がかりで引く巨岩を七つも首にかけているほど苦しく重い。それも神の思し召しとあれば耐えなければならない。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持が、後に彼の正妻となった坂上大嬢に贈った歌。「千引の石」は、千人で引かないと動かない石で、『古事記』にも登場する、黄泉の国の入り口をふさいで、イザナギイザナミを隔てた巨大な石のこと。大嬢への重い恋心に喩えていますが、あまりに大仰な表現であるため、歌の解釈として、真剣な訴えなのか、あるいは仲のよい恋人同士がじゃれ合うような遊び心の歌なのか、判断に迷うところです。

 

万葉集』の代表的歌人

第1期(~壬申の乱
磐姫皇后/雄略天皇舒明天皇/有馬皇子/中大兄皇子天智天皇)/大海人皇子天武天皇)/藤原鎌足/鏡王女/額田王

第2期(白鳳時代
持統天皇柿本人麻呂/長意吉麻呂/高市黒人志貴皇子弓削皇子/大伯皇女/大津皇子/穂積皇子/但馬皇女石川郎女

第3期(奈良時代初期)
大伴旅人大伴坂上郎女山上憶良山部赤人/笠金村/高橋虫麻呂

第4期(奈良時代中期)
大伴家持/大伴池主/田辺福麻呂/笠郎女/紀郎女/狭野芽娘子/中臣宅守湯原王