大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我が恋は千引の石を・・・巻第4-743

訓読 >>>

我(あ)が恋は千引(ちびき)の石(いし)を七(なな)ばかり首に懸(か)けむも神のまにまに

 

要旨 >>>

私の恋は、千人がかりで引く巨岩を七つも首にかけているほど苦しく重い。それも神の思し召しとあれば耐えなければならない。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持が、後に彼の正妻となった坂上大嬢に贈った歌。「千引の石」は、千人で引かないと動かない石で、『古事記』にも登場する、黄泉の国の入り口をふさいで、イザナギイザナミを隔てた巨大な石のこと。大嬢への重い恋心に喩えていますが、あまりに大仰な表現であるため、歌の解釈として、真剣な訴えなのか、あるいは仲のよい恋人同士がじゃれ合うような遊び心の歌なのか、判断に迷うところです。