大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

眉根掻き鼻ひ紐解け・・・巻第11-2808~2809

訓読 >>>

2808
眉根(まよね)掻(か)き鼻(はな)ひ紐(ひも)解け待てりやもいつかも見むと恋ひ来(こ)し我(あ)れを

2809
今日(けふ)なれば鼻ひ鼻ひし眉(まよ)かゆみ思ひしことは君にしありけり

 

要旨 >>>

〈2808〉眉を掻き、くしゃみをして、紐を解いて待っていてくれたんですか、早く逢いたいと恋しく思ってやって来た私を。

〈2809〉今日は何だか、鼻がむずむずして、くしゃみが出て、眉が痒い、と思ったら、あなたに逢える前兆だったんですね。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の問答歌。2808は、恋人のもとを訪れた男の歌、2809はそれに答えた女の歌です。「鼻ふ」は、くしゃみをすること。当時の習俗を知らないと理解できない歌であり、万葉人は、恋人が強く思ってくれると眉が痒くなる、さらにはくしゃみが出る、また、逢いたいなあと思い続けると相手の下着の紐がほどけると考えていました。それを逆手にとって、恋人に逢いたいと思うとき、眉を掻き、わざとくしゃみをし、紐をほどく、そうすると相手がやってくると、おまじないをかけていました。ここの問答は、そうしたことを題材に歌っています。