大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

楽浪の連庫山に雲居れば・・・巻第7-1170

訓読 >>>

楽浪(ささなみ)の連庫山(なみくらやま)に雲(くも)居(ゐ)れば雨ぞ降るちふ帰り来(こ)我(わ)が背(せ)

 

要旨 >>>

楽浪の連庫山に雲がかかると雨が降るといいます。帰ってきてください、あなた。

 

鑑賞 >>>

 「覊旅(旅情を詠む)」歌。「楽浪」は、琵琶湖西南岸地方を言い、また近江国の古名でもあります。「楽浪の」は「滋賀」「大津」「長等」「比良」など近江各地の地名に冠して枕詞のように用いられ、ここの「連庫山」も同じです。ただし「連庫山」がどの山を指したのかは不明で、比良山や比叡山とする説があります。作者は琵琶湖東岸に住んでいる女性で、夫は湖上で漁をする漁夫でしょうか。連庫山に雲がかかると雨になるという言い伝えがあったようです。