大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

ぬばたまの夜渡る月を留めむに・・・巻第7-1077

訓読 >>>

ぬばたまの夜(よ)渡る月を留(とど)めむに西の山辺(やまへ)に関(せき)もあらぬかも

 

要旨 >>>

夜空を渡る美しい月を押しとどめるために、西の山辺に関所でもないものだろうか。

 

鑑賞 >>>

 「月を詠む」歌。「ぬばたまの」は「夜」の枕詞。「ぬかも」は願望。この歌の発想は後世にも取り入れられ、たとえば在原業平が惟喬親王とともに狩に出た折、酒にうち興じているうち親王が酔ってしまい、奥へ引っこもうとしたため、業平が引き留めようとして即興で詠んだ、「飽かなくにまだきも月のかくるるか山の端にげて入れずもあらなむ」(『古今集』)という歌があります。「山の端」が逃げて、月(親王)を山陰に入れないでくれ、と言っています。