大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(4)・・・巻第14-3364

訓読 >>>

足柄(あしがら)の箱根の山に粟(あは)蒔(ま)きて実(み)とはなれるを逢はなくも怪(あや)し

 

要旨 >>>

足柄の箱根の山の畑に粟を蒔いて、無事に実がなったというのに、粟(あわ)がない、逢わないなんておかしい。

 

鑑賞 >>>

 相模の国(神奈川県)の歌。「実とはなれるを」は、男女が結ばれたことを意味しています。つまり、「2人の仲はしっかり結ばれたのに、逢わないなんておかしいじゃないの!」と、男を責めている女の歌です(男の歌とする説もあります)。

 「足柄の箱根の山」は神奈川県箱根町の山。箱根は『万葉集』ではすべて「足柄の箱根」と詠われており、地名の由来は、「足柄」が足柄山の杉材で造った船の足が軽くて速いことから足軽、それが足柄に転化した、また「箱根」の「根」は嶺や山を意味し、山の形が箱型であるためなどといわれています。「粟」はイネ科の雑穀。「逢わなく」に「粟(あわ)無く」の言葉を掛けています。

 

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