大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

富士の高嶺の燃えつつ・・・巻第11-2695、2697

訓読>>>

2695
我妹子(わぎもこ)に逢ふよしをなみ駿河(するが)なる富士の高嶺(たかね)の燃えつつかあらむ

2697
妹(いも)が名も我(わ)が名も立たば惜(を)しみこそ富士の高嶺(たかね)の燃えつつわたれ

 

要旨 >>>

〈2695〉いとしいあの子に逢う手だてがないので、あの駿河の富士の高嶺のように、私の胸はずっと燃え続けているのだろうか。

〈2697〉彼女の名も私の名も噂に立っては悔しいからこそ、あの富士の高嶺のように、思いを燃やすばかりで過ごしている。

 

鑑賞 >>>

 これらの歌から、このころには、富士山が噴煙を上げていたことがわかります。富士山は900年ころまでは活動していたそうですが、日本でもっとも古い物語とされている『竹取物語』、かぐや姫が登場するこの物語にも、富士山のようすが書かれています。

 物語の最後のほう、かぐや姫が月に帰ってしまった後のこと、天皇かぐや姫にもらった手紙と不死の薬を天にいちばん近い山の頂で火をつけて燃やすように命じ、そのためにその後ずっと煙が立ち上っているというのです。さらには、天皇の命令に従い多くの兵士が山に登ったことから、「富士の山(士に富む山)」と名づけられたとも。

 

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