大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(4)・・・巻第20-4420

訓読 >>>

草枕(くさまくら)旅の丸寝(まるね)の紐(ひも)絶えば我(あ)が手と付けろこれの針(はる)持(も)し

 

要旨 >>>

旅のごろ寝で、もし着物の紐が切れたなら、私の手が縫うと思ってこの針で付けて下さい。

 

鑑賞 >>>

 武蔵国橘樹郡の防人・物部真根(もののべのまね)の妻、椋椅部弟女(くらはしべのおとめ)が作った歌です。出立する夫は、今日から男手ひとつで身のまわりのことをしなくてはならない。その身を案じつつ、夫の衣の紐を固く結び、針と糸を夫に手渡します。そして、「紐が切れたら、自分の手で縫い付けるのよ」と言い聞かせます。その心の奥底にあるのは、「決して、浮気をしないでね」ということでもあります。

 「草枕」は「旅」の枕詞。「丸寝」はごろ寝のこと。「持し」というのは「持ち」の東国訛りのようです。

 

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