大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

韓衣 君にうち着せ・・・巻第11-2682

訓読 >>>

韓衣(からころも)君にうち着せ見まく欲(ほ)り恋ひぞ暮らしし雨の降る日を

 

要旨 >>>

韓衣をあの人に着せてみて、その姿を見たいと、恋い焦がれつつ過ごしました。雨の降るこの日を。

 

鑑賞 >>>

 妻が、自身で縫った韓衣を夫に着せてあげたいと、雨の日に訪れを待っている気持ちを詠んだ歌です。「韓衣」は唐風の衣服で、 袖が大きく丈が長くて、上前と下前を深く合わせて着るものでした。新風の衣服であり、貴族より始まって次第に庶民にまで及んだようです。

 この時代、夫の着物は妻が一切その手でまかなっていたのであり、晴着として出来上がった韓衣を夫に着せ、その姿を見たいというのは、妻としては特別な喜びで、夫としても嬉しいことであったでしょう。農耕で忙しい晴れの日は来れなくとも、雨の日は暇なので、夫はきっと来てくれるだろうと待ち焦がれていたとみえます。