訓読 >>>
思ふにし死にするものにあらませば千(ち)たびぞ我(わ)れは死に返(かへ)らまし
要旨 >>>
人が恋焦がれて死ぬというのでしたら、私は千度でも死んでまた生き返ることでしょう。
鑑賞 >>>
笠郎女(かさのいらつめ)が大伴家持に贈った歌。「思ふにし」の「し」は、強意。「ませば~まし」は、反実仮想。「死に返る」は「生き返る」の反対の言い方になっていますが、ここでは恋死にすることに強い意味を置いているためで、誇張した表現になっています。この歌は、『人麻呂歌集』にある「恋するに死にするものにあらませば我が身は千たび死に返らまし」(巻第11-2390)の歌を原拠としているようです。