大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

思ふにし死にするものにあらませば・・・巻第4-603

訓読 >>>

思ふにし死にするものにあらませば千(ち)たびぞ我(わ)れは死に返(かへ)らまし

 

要旨 >>>

人が恋焦がれて死ぬというのでしたら、私は千度でも死んでまた生き返ることでしょう。

 

鑑賞 >>>

 笠郎女(かさのいらつめ)が大伴家持に贈った歌。「思ふにし」の「し」は、強意。「ませば~まし」は、反実仮想。「死に返る」は「生き返る」の反対の言い方になっていますが、ここでは恋死にすることに強い意味を置いているためで、誇張した表現になっています。この歌は、『人麻呂歌集』にある「恋するに死にするものにあらませば我が身は千たび死に返らまし」(巻第11-2390)の歌を原拠としているようです。