訓読 >>>
風(かぜ)交(まじ)り雪は降るとも実にならぬ我家(わぎへ)の梅を花に散らすな
要旨 >>>
風交りの雪が降ることもあろうが、私の家の、まだ実になっていない梅の花を散らさないでおくれ。
鑑賞 >>>
大伴坂上郎女の歌。作者の娘(坂上大嬢)のことを喩えた歌といわれます。坂上大嬢は家持の従妹にあたり、のち家持の正妻になった女性です。「実に」は、確かな夫婦関係を喩える語でもあり、この歌は、娘に求婚している者のあるのを知って、それに対して腕曲に警戒を求めたもののようです。
『万葉集』では、雪を詠んだ歌は月や風に次いで多く、156首を数えます。この時代、大和の国でも雪に囲まれることが多かったのかもしれませんが、雪の珍しさのゆえに感心の度が深かったということもいえましょう。