大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

朝にゆく雁の鳴く音は・・・巻第10-2137

訓読 >>>

朝にゆく雁(かり)の鳴く音(ね)は吾(わ)が如(ごと)くもの念(おも)へかも声の悲しき

 

要旨 >>>

いま朝早く飛んでいく雁の鳴く声は、何となく物悲しい、彼らも私と同じように物思いをしているからだろう。

 

鑑賞 >>>

 「雁を詠む」歌。「朝に行く」の「朝に」は「つとに」と訓むものもあります。この歌について斎藤茂吉は、「惻々(そくそく)とした哀韻があって棄てがたい。『鳴く音は』『声の悲しき』は重複しているようだが、前はやや一般的、後は実質的で、他にも例がある」と述べています。