大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

遣新羅使人の歌(16)・・・巻第15-3659~3661

訓読 >>>

3659
秋風は日に異(け)に吹きぬ我妹子(わぎもこ)は何時(いつ)とか我(わ)れを斎(いは)ひ待つらむ

3660
神(かむ)さぶる荒津(あらつ)の崎(さき)に寄する波(なみ)間(ま)なくや妹(いも)に恋ひわたりなむ

3661
風の共(むた)寄せ来る波に漁(いざ)りする海人娘子(あまをとめ)らが裳(も)の裾(すそ)濡(ぬ)れぬ

 

要旨 >>>

〈3659〉秋風が日増しに強く吹くようになってきた。愛しい妻は今ごろ、私がいつ帰って来るだろうかと祈りながら待ち焦がれていることだろう。

〈3660〉神々しい荒津の崎に寄せくる波のように、絶え間なく私も、妻に恋い続けるのだろう。

〈3661〉風と共に寄せてくる波に、漁をする海人娘子たちの裳の裾が濡れている。

 

鑑賞 >>>

 題詞に「海辺にして月を望みて作る歌九首」とある歌のうちの3首。3659は、大使の二男の歌。名前は伝わっていません。「日に異に」は、日増しに。「斎ひ」は、斎戒する、神に祈ること。3660は、土師稲足(はじのいなたり:伝未詳)の歌。上3句は「間なく」を導く序詞。「神さぶる」は、神々しい。「荒津の崎」は、福岡市の西公園北端の岬。「間なくや恋ひわたりなむ」の「や」は疑問の係で、絶え間なく恋い続けるのだろうか。3661の「風の共」は、風と共に。