訓読 >>>
ぬばたまの夜霧(よぎり)は立ちぬ衣手(ころもで)を高屋(たかや)の上にたなびくまでに
要旨 >>>
夜霧がたちこめている。屋敷の高殿の上まですっぽり覆いつくしてたなびくほどに。
鑑賞 >>>
『柿本人麻呂歌集』に載っている舎人皇子(とねりのみこ)の歌。「ぬばたまの」は「夜」の枕詞。「衣手を」は「高屋」の枕詞。「高屋」は、邸内の高楼。一方、「高屋」は、現在の桜井市高家の地名であり、飛鳥から東にある高家の方を見て詠まれた歌ではないかとする見方もあります。
舎人皇子は天武天皇の第三皇子で、後に『日本書紀』編纂に携わり、中心的な役割を果たしたとされます。「舎人」の名は、乳母が舎人氏であったところから称せられたのではないかといわれます。『万葉集』には3首の歌を残しています。735年没。