訓読 >>>
我(わ)が形見(かたみ)見つつ偲(しの)はせあらたまの年の緒(を)長く我(あ)れも思はむ
要旨 >>>
私の思い出の品を見ながら、私を思ってください。私もずっと長くあなたを思い続けますから。
鑑賞 >>>
笠郎女が大伴家持に贈った歌。「形見」は、その人の身代わりとして見る品、記念品。ここは、郎女が自身の代わりとして家持に贈った品。「偲はせ」は「偲ふ」の敬語による命令形。「あらたまの」は「年」の枕詞。「年の緒」の「緒」は、年と同じく長く続いている物であるところから添えた語。
国文学者の窪田空穂はこの歌について「形見として贈った品に添えたもので、挨拶にすぎないものであるが、さっぱりした中に訴えの心を含ませ、落着いていて弛みのないものであって、歌才の凡ならざるを示している」と評しています。