大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

真葛原なびく秋風吹くごとに・・・巻第10-2096

訓読 >>>

真葛原(まくずはら)なびく秋風吹くごとに阿太(あた)の大野の萩(はぎ)の花散る

 

要旨 >>>

葛が生い茂る原をなびかせて秋風が吹く度に、阿太の野の萩の花が散っていく。

 

鑑賞 >>>

 「花を詠む」歌。「真葛原」の「真」は接頭語、「葛原」は葛の生えている原。「葛」の花は、萩と同じくらいにほのかに甘い香りがします。その名は、奈良県の国栖(くず)が葛粉の産地だったことに由来します。根は干して生薬や食品に、蔓は農作業に用いたり、編んで籠などの生活用品の材料になるほか、発酵させた後の繊維で葛布(くずふ)を織るなど、さまざまな用途のある 植物でした。「阿太」は、奈良県五條市の東部、吉野川沿いの一帯。「大野」は、人がいない荒れ野。真葛原と阿太の大野とは同じ野で、葛と萩の花との印象から、語を変えて繰り返しています。

 

 

 

万葉集』に詠まれた植物

1位 萩 142首
2位 こうぞ・麻 138首
3位 梅 119首
4位 ひおうぎ 79首
5位 松 77首
6位 藻 74首
7位 橘 69首
8位 稲 57首
9位 すげ・すが 49首
9位 あし 49首