大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

大伴家持の歌

安積皇子が亡くなった時に大伴家持が作った歌(2)・・・巻第3-478~480

訓読 >>> 478かけまくも あやに畏(かしこ)し わが大君(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) もののふの 八十伴(やそとも)の男(を)を 召(め)し集(つど)へ 率(あども)ひたまひ 朝狩(あさがり)に 鹿猪(しし)踏み起こし 夕狩り(ゆふがり…

安積皇子が亡くなった時に大伴家持が作った歌(1)・・・巻第3-475~477

訓読 >>> 475かけまくも あやに畏(かしこ)し 言はまくも ゆゆしきかも 我(わ)が大君(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) 万代(よろづよ)に 見(め)したまはまし 大日本(おほやまと) 久迩(くに)の都は うち靡(なび)く 春さりぬれば 山辺…

妻呼ぶ声のともしくもあるを・・・巻第8-1562~1563

訓読 >>> 1562誰(たれ)聞きつこゆ鳴き渡る雁(かり)がねの妻呼ぶ声のともしくもあるを1563聞きつやと妹(いも)が問はせる雁(かり)がねはまことも遠く雲隠(くもがく)るなり 要旨 >>> 〈1562〉どなたかお聞きでしょうか、ここから鳴き渡って行く…

亡くなった弟を哀傷する歌・・・巻第17-3957~3959

訓読 >>> 3957天離(あまざか)る 鄙(ひな)治(をさ)めにと 大君(おほきみ)の 任(ま)けのまにまに 出でて来(こ)し 我(わ)れを送ると あをによし 奈良山(ならやま)過ぎて 泉川(いづみがは) 清き河原(かはら)に 馬 留(とど)め 別れし時…

大伴家持と大伴坂上郎女の歌・・・巻第8-1619~1620

訓読 >>> 1619玉桙(たまほこ)の道は遠けどはしきやし妹(いも)を相(あひ)見に出でてぞ我(あ)が来(こ)し1620あらたまの月立つまでに来ませねば夢(いめ)にし見つつ思ひそ我(あ)がせし 要旨 >>> 〈1619〉道のりは遠くても、いとおしいあなた…

秋さらば見つつ偲へと・・・巻第3-464~465

訓読 >>> 464秋さらば見つつ偲(しの)へと妹(いも)が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも 465うつせみの世は常(つね)なしと知るものを秋風 寒(さむ)み偲(しの)ひつるかも 要旨 >>> 〈464〉秋になったらごらんになって私を思い出してください…

今よりは秋風寒く吹きなむを・・・巻第3-462~463

訓読 >>> 462今よりは秋風(あきかぜ)寒く吹きなむを如何(いかに)かひとり長き夜(よ)を寝(ね)む 463長き夜(よ)をひとりや寝(ね)むと君が言へば過ぎにし人の思ほゆらくに 要旨 >>> 〈462〉これから秋風が寒く吹く時節を迎えるのに、どのよう…

大宮の内にも外にもめづらしく・・・巻第19-4285~4287

訓読 >>> 4285大宮の内(うち)にも外(と)にもめづらしく降れる大雪な踏(ふ)みそね惜(を)し 4286御園生(みそのふ)の竹の林に鴬(うぐひす)はしば鳴きにしを雪は降りつつ 4287鴬(うぐひす)の鳴きし垣内(かきつ)ににほへりし梅この雪にうつろ…

この雪の消残る時に・・・巻第19-4226

訓読 >>> この雪の消(け)残る時にいざ行かな山橘(やまたちばな)の実(み)の照るも見む 要旨 >>> この雪が消え残っている間にさあ行こう。山橘の実が赤く照り輝いている様を見るために。 鑑賞 >>> 大伴家持の歌です。「山橘」は常緑低木のヤブ…

夢の逢ひは苦しかりけり・・・巻第4-741

訓読 >>> 夢(いめ)の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻(か)き探(さぐ)れども手にも触れねば 要旨 >>> 夢の中で逢うのは苦しいものです。あなたに逢えたと思って目を覚まして手探りしても、何にも触れることができないので。 鑑賞 >>> 大伴家持…

宴席の歌(3)・・・巻第20-4302~4303

訓読 >>> 4302山吹(やまぶき)は撫(な)でつつ生(お)ほさむありつつも君(きみ)来(き)ましつつ挿頭(かざ)したりけり 4303我(わ)が背子(せこ)が宿(やど)の山吹(やまぶき)咲きてあらばやまず通はむいや年の端(は)に 要旨 >>> 〈4302…

雪の上に照れる月夜に・・・巻第18-4134

訓読 >>> 雪の上(うへ)に照れる月夜(つくよ)に梅の花(はな)折りて送らむはしき子もがも 要旨 >>> 雪の上に輝く月の美しいこんな夜に、梅の花を折って贈ってやれる、いとしい娘でもいたらなあ。 鑑賞 >>> 大伴家持が、宴席で「雪、月、梅の花…

宴席の歌(1)・・・巻第19-4279~4281

訓読 >>> 4279能登川(のとがは)の後(のち)には逢はむしましくも別るといへば悲しくもあるか 4280立ち別れ君がいまさば磯城島(しきしま)の人は我れじく斎)いは)ひて待たむ 4281白雪(しらゆき)の降り敷く山を越え行かむ君をぞもとな息(いき)の…

手もすまに植ゑし萩にや・・・巻第8-1633~1635

訓読 >>> 1633手もすまに植ゑし萩(はぎ)にやかへりては見れども飽(あ)かず心 尽(つく)さむ1634衣手(ころもで)に水渋(みしぶ)付くまで植ゑし田を引板(ひきた)我が延(は)へまもれる苦し1635佐保川(さほがは)の水を堰(せ)き上げて植ゑし田…

霍公鳥 飼ひ通せらば・・・巻第19-4180~4183

訓読 >>> 4180春過ぎて 夏来向へば あしひきの 山呼び響(とよ)め さ夜中(よなか)に 鳴く霍公鳥(ほととぎす) 初声(はつこゑ)を 聞けばなつかし あやめぐさ 花橘(はなたちばな)を 貫(ぬ)き交(まじ)へ かづらくまでに 里(さと)響(とよ)め …

雨も降らぬか・・・巻第18-4122~4124

訓読 >>> 4122天皇(すめろき)の 敷きます国の 天(あめ)の下(した) 四方(よも)の道には 馬の爪(つめ) い尽(つく)す極(きは)み 舟舳(ふなのへ)の い泊(は)つるまでに 古(いにしへ)よ 今の現(をつつ)に 万調(よろづつき) 奉(まつ)…

雁がねの妻呼ぶ声の・・・巻第8-1562~1563

訓読 >>> 1562誰(たれ)聞きつこゆ鳴き渡る雁(かり)がねの妻(つま)呼ぶ声のともしくもあるを 1563聞きつやと妹(いも)が問はせる雁(かり)がねはまことも遠く雲隠(くもがく)るなり 要旨 >>> 〈1562〉どなたかお聞きでしょうか、ここから鳴き…

織女し舟乗りすらし・・・巻第17-3900

訓読 >>> 織女(たなばた)し舟乗りすらしまそ鏡(かがみ)清き月夜(つくよ)に雲立ちわたる 要旨 >>> 織り姫は舟に乗って漕ぎ出したよう。美しい鏡のように、清い月夜に雲が立ち渡っていく。 鑑賞 >>> 天平10年(738年)7月7日の夜に、大伴家持が…

うはへなき妹にもあるかも・・・巻第4-691~692

訓読 >>> 691ももしきの大宮人(おほみやひと)は多かれど心に乗りて思ほゆる妹(いも) 692うはへなき妹(いも)にもあるかもかくばかり人の心を尽(つく)さく思へば 要旨 >>> 〈691〉大宮に仕える女官はたくさんいるけれども、私の心に乗りかかって…

海行かば水漬く屍・・・巻第18-4094~4097

訓読 >>> 4094葦原(あしはら)の 瑞穂(みづほ)の国を 天下(あまくだ)り 知らしめしける すめろきの 神の命(みこと)の 御代(みよ)重ね 天(あま)の日継(ひつぎ)と 知らし来る 君の御代(みよ)御代 敷きませる 四方(よも)の国には 山川(や…

立山に降り置ける雪を・・・巻第17-4000~4002

訓読 >>> 4000天離(あまざか)る 鄙(ひな)に名かかす 越(こし)の中(なか) 国内(くぬち)ことごと 山はしも しじにあれども 川はしも 多(さは)に行けども 統神(すめかみ)の 領(うしは)きいます 新川(にひかは)の その立山(たちやま)に …

藤波の影なす海の・・・巻第19-4199~4202

訓読 >>> 4199藤波(ふぢなみ)の影(かげ)なす海の底(そこ)清み沈(しづ)く石をも玉とぞ我(わ)が見る 4200多祜の浦の底さへにほふ藤波をかざして行かむ見ぬ人のため 4201いささかに思ひて来(こ)しを多祜の浦に咲ける藤見て一夜(ひとよ)経(へ…

をととしの先つ年より・・・巻第4-783~785

訓読 >>> 783をととしの先つ年より今年まで恋ふれどなぞも妹(いも)に逢ひかたき 784うつつにはさらにもえ言はず夢(いめ)にだに妹(いも)が手本(たもと)を卷き寝(ぬ)とし見ば 785我がやどの草の上白く置く露(つゆ)の身も惜しからず妹(いも)に…

堅香子の花・・・巻第19-4143

訓読 >>> もののふの八十娘子(やそをとめ)らが汲(く)み乱(まが)ふ寺井(てらゐ)の上の堅香子(かたかご)の花 要旨 >>> たくさんの乙女たちが、入り乱れては水を汲む、寺の境内にある井戸のそばに群がって咲いているカタクリの花よ。 鑑賞 >>…

うらうらに照れる春日に・・・巻第19-4292

訓読 >>> うらうらに照れる春日(はるひ)にひばり上がり心悲しも独(ひとり)し思へば 要旨 >>> うららかに日の照っている春の日に、雲雀の声も空高く舞い上がり、やたらと心が沈む。こうしてひとり物思いにふけっていると。 鑑賞 >>> 家持がこの…

部下の重婚を𠮟りつけた家持の歌・・・巻第18-4106~4109

訓読 >>> 4106大汝(おほなむち) 少彦名(すくなひこな)の 神代(かみよ)より 言ひ継(つ)ぎけらく 父母(ちちはは)を 見れば尊(たふと)く 妻子(めこ)見れば 愛(かな)しくめぐし うつせみの 世の理(ことわり)と かくさまに 言ひけるものを …

うち霧らし雪は降りつつ・・・巻第8-1441・1446

訓読 >>> 1441うち霧(き)らし雪は降りつつしかすがに吾家(わぎへ)の園(その)に鶯(うぐひす)鳴くも 1446春の野にあさる雉(きぎし)の妻恋(つまご)ひにおのがあたりを人に知れつつ 要旨 >>> 〈1441〉大空を霞(かす)ませるように雪が降りし…

三日月の眉根掻き・・・巻第6-993~994

訓読 >>> 993月立ちてただ三日月の眉根(まよね)掻(か)き日長く恋ひし君に逢へるかも 994ふりさけて若月(みかづき)見ればひと目見し人の眉引(まよび)き思ほゆるかも 要旨 >>> 〈993〉姿をあらわしてたった三日という細い月のかたちの眉を掻いて…

梅のいまだ咲かなく・・・巻第4-786~788

訓読 >>> 786春の雨はいやしき降るに梅の花いまだ咲かなくいと若みかも 787夢のごと思ほゆるかもはしきやし君が使の数多く通へば 788うら若み花咲きかたき梅を植ゑて人の言(こと)繁(しげ)み思ひぞ我がする 要旨 >>> 〈786〉春雨はしきりに降ってい…

あぶら火の光に見ゆる・・・巻第18-4086

訓読 >>> あぶら火の光に見ゆるわが縵(かづら)さ百合(ゆり)の花の笑(ゑ)まはしきかも 要旨 >>> 燈火に照り映える私の髪飾りの、小さな百合の花のなんとほほえましいことよ。 鑑賞 >>> 大伴家持が、越中守として赴任していた時の歌です。初夏…